kiss the gamblerインタビュー:「私は人を助けたい気持ちが強すぎた」

kiss the gamblerの次回作は「あなただったらどうしますか?」?


―kiss the gamblerの楽曲に救われて、前向きになれたって思うリスナーもいると思います。歌というのは、音に乗せて言葉が拡散されていくことで、自分が本来会うことがないかもしれない人にも届いて、前向きにさせたり、気持ちを変えたりみたいなことができる手段だと思いますから。でも、そんなところまで視野が行き届くようになったというのはすごいですね。

kiss the gambler : なんか教祖みたいだって言われたことがあって、その言葉にめちゃくちゃびっくりしてしまって。私、教祖やってたつもりはなかったな〜、って。

それは誰からどういう場面で言われたんですか?

kiss the gambler : 友達が恋愛関係で悩んでるって話を聞いてる時に、こうしてみたら?ああしてみたら?みたいなのをあれこれ言い続けてたら、教祖みたいだなって言われて、衝撃だったんですよね。私としてはその問題を解決できそうなアイデアを出してなんとか力になりたいと思っていたんですけど、 友達からは教祖に見えてたって。これすごい上下関係があるじゃないですか?
で、最近たまたま知ったんですけど、「アサーション」というコミュニケーションの取り方がありまして。相手を不快にさせずに、どうやって自分の思いも伝えられるかという手法なんですけど、今はそれに興味があります。
それにまつわる本を読んでいる中で、こちらが沢山主張するんじゃなくて、耳を傾ける−相手の話を聞くことを頑張った方がいいと書いてあって。聞き手が自分の意見を言うのも大事なんですけど、 べき論は出さずに「私はこう思うよ?」とか「あなただったらどうしますか?」ぐらいにしておいた方が、相手も意見を言い出せるんだそうです。
で、喋り手からすると、その質問への答えって自分の中から出てきた言葉だから、自分自身で行動できるようになると書いてありました。
そういうやり方の方が教祖だと思われなくていいのではと思い、次のアルバムに入る曲とかは、そういう疑問系で行こうかな?って思ったり(笑)

ー次回作はもしかしたら自問自答のような歌詞だったり、独白みたいなテンションになるかも?

kiss the gambler : かもしれないし、もう本当に何言ってるかわかんないだけの歌詞になるかもしれない(笑)

kiss the gamblerの次回作は自己肯定ソング=ビヨンセ?


―実は、4月にtwitterでされていたある発言が個人的に印象に残ったんです。

誰かを救いたい気持ちって自分に自信がないから生まれるんだってさ。
kiss the gambler ってそんな曲ばっかりだ笑
あなたが/私が 救われたい気持ちソングばっかり作ってたな…
もうビヨンセみたいな曲作ります

これは、今のような心境ゆえの発言だったということですか?

kiss the gambler : あー、言いましたね、そんなこと。実は、それはまた違う話に起因しているんですよ。
私の音楽が好きだ、って言ってくれた友達が経済的に悩んでいるという話を聞いていたんです。
その会話の中でまたしても「こうした方がいいんじゃないか」「こういう環境が悪かったせいなんじゃないか」というアドバイスや勝手な分析をしてしまって。
ふと、「こういうおせっかいなところが私の楽曲に表れているなぁ。そういえば私の曲って誰かを救いたいっていう気持ちの曲ばっかりだな」って言ったんです。そしたら、友達はその言葉を不快に思ったらしくて、「誰かを救いたいという気持ちを持つのは、自分に自信がないからなんじゃないですか」って返されて。

―辛辣(笑)

kiss the gambler : 結構傷つきました(笑)
誰かを助けたい時、助ける側の人は自分に余裕や自信があるよね、というのならわかるのですが、いまいちこの発言の真意がわからないままになってしまって、頭の中に残った言葉をつぶやいた…という感じでした。誰かを救ってないと自分の存在意義を保てないという意味だったのかなぁ…。でも、この話を通じて、自分が当たり前と思っている常識や環境、考え方が当てはまらない人がいっぱいいるってことを、これまでも事実としては認識していたけど、改めて実感させられたんです。
そして、そういう人にかけるべき言葉って、具体的な問題点の追求ではなくて、「頑張ってるんだね。本当に偉いね」みたいな、それだけだったんだなって今は思います。

ーかなふぁんは具体的に物事を解決しなきゃ、とか 、現実が好転するようにしなきゃ、という風な思考が強いタイプなのかもしれないですね。

kiss the gambler : 今振り返ると、私が身近で見てきた愛情の形が具体的なもの・ことだったからなのかもしれないです。例えば習い事をいっぱいさせてもらった、とか、大学に行かせてもらった、とか。その代わり「大丈夫だよ」とか「よく頑張ったね」みたいな褒め言葉がなかったから、他人にもそう振る舞ってしまうのかも…。

なるほど。
活動の広がりとともに、社会との色々な繋がり方を発見しているkiss the gamblerが次回どんな作品を作るのか、今から楽しみです。

kiss the gambler 「私は何を言っていますか?」TOUR 2023 日程

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