SUGEEインタビュー/世界を回り辿り着いた、癒しと循環の音楽

新型感染症によるパンデミックから2年近くが経過し、各国での人の往来が取り戻されつつある中、日本の水際対策は慎重な姿勢を崩さず、世界への扉が重たい日々が未だに続いている。
先日2ndアルバム『花神』をリリースしたSUGEEは世界を旅した経験を元に音楽を制作するボーカル&パーカッショニストである。
「伝統的なコミュニティが好きで、興味を満たすために出かけていった」という彼の旅は世界各地に及び、現地の住民たちと深い交流を交わしてきた。今回、彼が巡ってきた旅のエピソードを通じて、音楽的なバックグラウンドを語ってもらった。
彼の冒険譚を聞いているうちに、私たちもそろそろ、新しい旅を始める準備をしてもいい頃なのかもしれないと思った。


SUGEE
沖縄、東南アジア、中南米、キューバ、西アフリカ等を旅し各地のシャーマンとの交流の中から、自らのスピリチュアリティ(霊性)とクリエイティビティ(創造性)に目覚める。帰国後はボーカル&ジェンベ奏者としてFUJI ROCK FESTIVALをはじめ様々なフェスやイベントに出演。
また群馬館林で自ら栽培する熱帯植物を使った空間コーディネーターとして、東京都内を中心に様々な都市空間の創造に携わっている。自身がボーカルをつとめるバンドThe ARTHでの活動を経て、ソロ活動を開始。ライブではLÄ-PPISCHベーシストのtatsu、The Shamisenistsの寂空-Jack-と共にSUGEE&The SPACE TRIBE名義でも出演。2022年2ndアルバム『花神』(かしん)をリリース。
(Official HP)


1.台湾・沖縄・東南アジア:アミの長老を訪ねて

SUGEE:台湾のアミ¹の伝統的な歌を体系化させたディファン(Difang/郭英男)という長老がいたんですけど、彼の歌が好きで、会いに行ったんですね。ここから様々な国に、「この曲が好きだ、この人に会いたい」って思って旅することになっていくんですけど、初めては、このディファンですね。

¹中国大陸からの移民が盛んになる17世紀以前から居住していた台湾最大の原住民族。

 -最初に彼をどうやって発見したのでしょう?

SUGEE:エニグマ(Enigma) という、グレゴリオ聖歌をテクノのトラックに乗せて聴かせる、みたいなユニットがディファンの歌をサンプリングした曲を出していて、それがテクノ好きの間で話題になってたんです。そこから掘っていくと、ディファンのソロアルバムも出ていることを知りました。CDを購入して聴いていたところ、台東の近くの馬蘭(マーラン)というところにいると書いてあったので、行ってみようって。
馬蘭の駅まで本人が写ってるCDのジャケット持っていって、タクシードライバーに「この人知ってるか」って言ったら、「知ってる」って言うので連れてってもらいまして。今だったら難しいでしょうね、きっと(笑)

郭英男1st album 循環之環

-ディファンとは日本語で会話されたとか。

SUGEE: 日本統治時代の教育によるものだと思いますが、とても綺麗な日本語でした。意外にも日本に対しての悪い感情というのをあまり感じませんでしたね。台湾って大陸の漢民族と、海の少数民族が融合してるという意味では日本に近いのかなって思ったりして。

-今SUGEEさんは沖縄の久高島を拠点に、ヤポネシア²というテーマでも活動もされていますよね。これは、東南アジアから日本までの一帯が海の交易路として繋がってきた大きいコミュニティだ、ということを表す言葉だそうですが。

SUGEE: 平和とか、人の繋がりなどを考える上で「海」というのが、1つのキーワードだなと思っているんです。先のアミはポリネシア系がルーツだと言われてるんですが、一方でモンゴロイドも海流に乗って移動した結果、台湾、沖縄近海まで来たと思うんです。別の旅で訪れたタイのチャーン島などにも同様の雰囲気がありました。だからこの海域と言うのは、大陸の血と海の民族の血が混じっていているのだと思います。なので、海はみんなの共有物として繋がってるというか、国境という概念が通用しない繋がりというのが大事だということを感じています。

² ヤポネシア(Japonesia)とは作家の島尾敏雄が考案した造語で、「海洋アジアへ開かれた日本」を意味する。

-ご自身の楽曲にも「海のアジール」という楽曲があり、まさにこの海域のことを歌われていますね。

SUGEE: 沖縄の海を初めて見たときに感じたことを曲にしています。太古からの人の流れや、海の民族のおおらかさを感じて出来た曲ですね。
沖縄の人のメンタリティって「いちゃりばちょーでー(一度会えば兄弟)」という言葉もあるくらい、国境・民族関係なく来た人をもてなすというもので、遭難してきた人は食べさせるし、飲ませるし、泊まらせるしという感じなので。

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